ピアノとの会話

 趣味でピアノを続けている。とは言っても、ピアノ教室に通っていたわけでもなく家にあったピアノをそれっぽく弾くお遊びだった。思春期の男というのは得てして意味もなく反抗的態度を取りたがる節があるが私もその例に漏れることなく、知り合いからのピアノ教室へのお誘いを突っぱね続けて結局習うことはなかった。

 なので独学ということになる。聞こえはいいが、非常に苦労することが多い。ハノンのような教則本ではなく、最初から流行りの曲やCMで流れている簡単なクラシックをおっかなびっくり弾くだけで、本当にピアノを演奏するということはできなかった。だがそれも最初の一年程度で終わり、あとは当時同級生だった友人の見よう見まねでトルコ行進曲をなんとか弾けるまでになった。もともと親指から小指まで普通に伸ばしてCからEまで届くという手の大きさに恵まれていたのも功を奏したのだろう。

 かれこれ十年以上になるだろうか。音大に進んだ友人に演奏を指摘してもらったり、それなりなピアノライフを送っている。たまにマイクで自分の演奏を録音し、それを聞いて演奏者と聴衆という違う立場から曲を感じ取るというのもまた面白い。そうして改善していくことで上達を実感できるのが音楽のいいところだ。

 ベートーヴェンモーツァルトショパンなど高名な作曲家は多いが、特に練習しているのはカプースチンラフマニノフ。たまにラヴェルやリスト、シマノフスキゲーム音楽にも手を出す。グレード受講の自由曲もこの作曲家の曲から選ぶ場合が多い。次のグレードではシマノフスキマズルカを弾くことにしている。とあるピアニストのコンサートで聴いて以来ずっと弾けるようになるのを夢見てきた曲ということで、細部に渡る細かな表現まで突き詰めるのが今の課題だ。

 音楽は言葉と一緒、私の好きなピアニストである上原ひろみの言葉だ。音楽を血肉にした演奏をするエネルギッシュな演奏が彼女の持ち味だが、考え方からも彼女の音色がいい理由がわかる。

【「このピーマン、おいしいよ」と自信を持って言われると食べてみたくなるけれど、「あまり美味しくないよ」といわれるピーマンなら、欲しくないでしょう?音楽も一緒だと思います。自信がある曲を弾かなきゃ伝わらない。】という文はわかりやすい。確かに自信のある曲でなければ演奏者の不安も聴衆は感じ取ってしまい、その時点でいい演奏ではなくなってしまう。

 彼女の演奏は音楽の楽しさを教えてくれる。ジャズというジャンルだからではない。演奏しているピアニストが心から音楽を楽しんでいなければ、楽しい演奏はできないのだ。グレード受験にあたって私も、会場の雰囲気や音楽を楽しめるような気楽な心構えで臨めたら。そう思う今日このごろだ。




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